発達障害者支援法はなぜ作られたのか

結論:この法律は「支援の谷間」を埋めるために作られました

発達障害者支援法は、もともと既存の福祉制度では十分な支援を受けにくかった人たちを、できるだけ広く支えるために作られた法律です。

そのため、この法律における「発達障害」は、医学的な診断名だけで狭く区切るというよりも、支援の必要がありながら制度の谷間に置かれてきた人たちを救うという性格を強く持っています。

かつての福祉制度

かつての福祉制度は、

  • 身体障害者福祉法
  • 知的障害者福祉法
  • 精神障害者保健福祉法

といった、いわゆる「福祉三法」を中心に成り立っていました。

それぞれに対応する制度や手帳はありましたが、知的障害を伴わない自閉症など、既存の枠組みの中で十分な支援を受けにくい人たちがいました。

つまり、制度がまったくなかったわけではないものの、現実には支援の谷間に置かれる人たちがいたのです。

なぜ新しい法律が必要だったのか

こうした状況の中で、自閉症の支援団体を中心に、既存の制度では十分に支えられていない人たちへの法整備を求める動きが積み重ねられてきました。

その流れの中で、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)への関心も高まり、特定の一つの診断名だけではなく、より広い対象を包括的に支える法律として、発達障害者支援法が成立していきました。

この法律の対象は、最初から広く考えられていた

発達障害者支援法は、最初からできるだけ広い対象を支援することを意識して設計されてきました。

そのため、法第2条の文言だけを見ると、自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害などが前面に出ていますが、実際の制度運用では、それだけに限られない広い対象が想定されていました。

施行令・施行規則をたどると、「心理的発達の障害」や「行動及び情緒の障害」が対象に含まれており、ICD-10におけるF80〜F89、F90〜F98に入る障害が法の対象とされてきました。

場面緘黙も、その流れの中にあります

場面緘黙は、ICD-10では F94.0「選択性緘黙」に分類されており、「行動及び情緒の障害」の中に位置づけられています。

つまり場面緘黙は、あとから特別にねじ込まれた存在ではなく、発達障害者支援法が本来めざしていた「既存の制度からこぼれやすい人たちも含めて支える」という流れの中に位置づいています。

「発達障害」という言葉が分かりにくくなった理由

ここで問題になるのは、「発達障害」という言葉が、一般にはASD、ADHD、LDなどの限られた障害だけを指すように受け取られやすくなっていることです。

しかし、発達障害者支援法の枠組みは、もともともっと広い対象を支えるために作られてきました。

そのため、制度上の「発達障害」と、日常的に使われる「発達障害」という言葉のイメージの間には、ずれが生じています

狭く理解されることの問題

この法律の対象が、本来の理念よりも狭く理解されてしまうと、制度があるのに支援の現場で認識されない、説明しても通じにくい、必要な配慮につながりにくいといった問題が起こります。

場面緘黙も、まさにそうした「制度上は対象だが、現場で十分に認識されにくい」状態に置かれやすい障害の一つです。

その意味で、この法律の成り立ちを知ることは、単なる歴史の勉強ではなく、今の支援や理解のあり方を考えるためにも大切です。

【静岡 場面かんもくの会】として大切にしたい視点

【静岡 場面かんもくの会】では、発達障害者支援法を、診断名を狭く区切るための法律ではなく、支援の谷間に置かれてきた人たちを広く支えるための法律として理解しています。

場面緘黙は、学校や社会生活の中で困りごとが生じ、支援や合理的配慮が必要になる状態です。

そのため、分類や名称の違いにかかわらず、必要な人に必要な支援が届くことが、この法律の本来の理念に沿うものだと考えています。

参考資料

・発達障害者支援法(e-Gov法令検索)
・発達障害者支援法施行規則(e-Gov法令検索)
・ICD-10関連資料

さらに詳しく知りたい方へ

場面緘黙の分類や制度をめぐる考え方は、ICD-11への改訂などにより、現在も議論が続いています。

詳しくは以下の記事で整理しています。