結論:場面緘黙は対象に含まれています
場面緘黙は、現時点では発達障害者支援法の対象に含まれています。
ただし、その位置づけは少し分かりにくく、制度の成り立ちや国際的な分類との関係を整理して理解する必要があります。
発達障害者支援法とはどのような法律か
発達障害者支援法は、2004年に公布された法律で、それまでの福祉制度では十分な支援を受けられなかった人たちを広く支えるために作られました。
従来の福祉制度は、
・身体障害者福祉法
・知的障害者福祉法
・精神障害者保健福祉法
といったいわゆる「福祉三法」によって構成されていました。
しかし、知的障害を伴わない自閉症などの障害を持つ人たちは、この制度の中で十分な支援を受けられず、「福祉の谷間」に置かれていました。

こうした背景から、より広い対象を支援するために発達障害者支援法が制定されました。
発達障害者支援法の対象
発達障害者支援法では、「発達障害」を次のように定義しています。
自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など、脳機能の障害であって低年齢で発現するもの
さらに、施行令・省令により、
「心理的発達の障害」
「行動及び情緒の障害」が対象とされています。
これらは、国際的な疾病分類であるICD-10における
・F80〜F89(心理的発達の障害)
・F90〜F98(行動及び情緒の障害)
に対応するものとされています。
発達障害者支援法の条文や施行規則は、e-Gov法令検索でも確認できます。
場面緘黙はどこに位置づくか
場面緘黙は、ICD-10において
F94.0(選択性緘黙)に分類されています。
ICD-10における分類
F90〜F98:行動及び情緒の障害
└ F94:社会的機能の障害
└ F94.0:選択性緘黙(場面緘黙)
これは「行動及び情緒の障害」の中に含まれる分類です。
そのため、発達障害者支援法の対象として扱われています。
ICD-10の分類については、厚生労働省等の資料でも確認できます。
なぜ分かりにくいのか
発達障害者支援法における「発達障害」は、医学的な診断分類と完全に一致しているわけではありません。
この法律は、特定の病名を定義するためのものではなく、支援が必要な人を広く対象とするために設けられた制度です。
そのため、医学的には異なる背景を持つ状態であっても、支援の必要性に応じて同じ枠組みで扱われることがあります。
この点が、場面緘黙の位置づけを分かりにくくしている理由の一つです。
「発達障害」という言葉は、特定の一つの病気を指すものではありません。
制度上の支援の枠組みとして用いられている概念です。
そのため、場面緘黙のように不安が強く関係する状態も、支援の必要性という観点から対象に含まれています。
まとめ
- 場面緘黙はICD-10上、F94.0に分類される
- 発達障害者支援法はICD-10を前提としている
- そのため、現時点では法の対象に含まれている
ただし、医学的な分類と制度上の分類は一致しているわけではなく、今後の議論の動向にも注意が必要です。
参考資料
さらに詳しく知りたい方へ
場面緘黙の分類や制度をめぐる考え方は、ICD-11への改訂などにより、現在も議論が続いています。
詳しくは以下の記事で整理しています。
・ICD-10からICD-11へ―場面緘黙の分類はどう変わったのか
・発達障害者支援法はなぜ作られたのか
