家庭での関わり方を考える
場面緘黙の支援は、特別な場所だけで行うものではなく、日常の関わりの中で少しずつ積み重なっていくものです。
そのため、家庭でどのように関わるかはとても重要になります。
ただし、「こうすれば必ずうまくいく」という単純な方法があるわけではありません。
子どもの状態や環境によって、合う関わり方は異なります。
ここでは、実際に取り組みを進める前に、保護者の方に知っておいていただきたい基本的な考え方を整理しています。
支援の全体像をまだご覧になっていない方は、先にこちらをご確認ください。
まず家庭で見ておきたいこと(家庭での見立て)
支援を始める前に、まずは現在の状態を具体的に見ていきます。
- 誰となら話しやすいか
- どの場所なら安心して過ごせるか
- どのような活動なら参加しやすいか
- どのような方法なら反応できるか(声・うなずき・指さし・筆談など)
また、
- 家庭ではどの程度話せているか
- 学校ではどうか
- その差はどこにあるか
といった点も重要です。
さらに、
- どのような場面で緊張が強くなるか
- どのような関わりで固まりやすくなるか
- 誰の前だと負担が大きいか
なども見ておきます。
この見立てがあいまいなまま進めると、無理のある目標になりやすく、うまくいかない原因になります。
目標は小さく、具体的に立てる
目標は「学校で話せるようになる」といった大きなものではなく、
今の状態から少しだけ進める具体的なものにします。
たとえば、
- 家で家族以外の人の前で一言話す
- 決まった場面でうなずきで返事をする
- 小さな声で一語だけ伝える
といったように、行動を具体的にします。
また、目標は
- どこで
- 誰と
- 何をするか
に分けて考えると、現実的になります。
無理に進めると失敗体験になりやすいため、
「これならできそう」と思える範囲から始めることが重要です。
保護者ができること
安心できる条件を見つける
まずは、本人が安心して反応できる条件を探します。
人、場所、時間帯、活動内容などによって、反応しやすさは変わります。
その中で「少しできる」条件を見つけることが出発点になります。
小さな成功体験を積み重ねる
できたことを確実に積み重ねていくことが重要です。
一度できたことでも、条件が変わると難しくなることがあります。
同じ条件で安定してできるようにしてから、次に進みます。
焦らず、同じ成功を繰り返しながら、少しずつ進むことが結果として近道になります。
家庭を土台にして少しずつ広げる
家庭でできていることを、そのまま外に持ち出すのではなく、少しずつ条件を変えながら広げていきます。
家庭でできているやり取りや反応は、支援の出発点として大きな意味があります。
いきなり難しい場面に入るのではなく、できる条件を少しずつ動かしていくことが大切です。
友だちとのつながりをつくる
友だちとのつながりは、場面緘黙のある子どもの保護者にとって、とても大きな課題です。
実際には、「友だちとのつながりを広げることが大切」と言われても、そもそもその関係が作れずに困っていることが少なくありません。
自然に遊べる関係がすでにできているなら、保護者が深く悩む場面はむしろ少ないはずです。
そのため、つながりを作るために周囲の力を借りる視点が必要になります。
たとえば、
- 学校の先生に、比較的安心しやすそうな子を見立ててもらう
- 遊びやすそうな相手を先生に推薦してもらう
- 最初は保護者や先生が間に入り、関係づくりを助ける
といった形で始めることも考えられます。
また、最初から多人数ではなく、比較的安心しやすい相手との1対1から始める方が進めやすいことがあります。
場所も、最初は自宅のように安心しやすい環境が向いています。
継続して関われる相手を見つけ、無理のない形でつながりを保っていくことは、社会的な場面を広げるための土台になります。
親族との関係を活かす
祖父母、叔父叔母、いとこなど、家族に近いけれど家庭の外にいる相手とのやり取りも、支援の中で意味を持つことがあります。
親密さがありつつも、家庭とは少し条件が違うため、家庭の外に広げていく際の中間的な場面になりやすいからです。
こうした関係の中で、本人が比較的安心して関われる相手がいれば、そのつながりを大切にすることが役立ちます。
課外活動とのつながりを考える
子どもの状態によっては、課外活動が支援のきっかけになることもあります。
ただし、課外活動は負担も大きいため、誰にでもすぐ勧められるものではありません。
新しい場所、新しい大人、新しい子どもたちがそろうことで、強い緊張につながることもあります。
そのため、本人の状態を見ながら、体験参加から始める、短時間にとどめる、事前に指導者に状況を伝えるなど、無理のない入り方を考えることが大切です。
公共の場での活動を少しずつ広げる
家庭の外でのやり取りとして、公共の場での活動を少しずつ広げていくことも考えられます。
ここでいう公共の場での活動とは、たとえば、
- レストランで注文をする
- 店員さんに「ありがとう」と伝える
- スーパーやコンビニで「〇〇はどこにありますか」と聞く
といった、日常の中の小さなやり取りです。
こうした場面は、生活に近く、将来にもつながる大切な練習の場になります。
ただし、いきなり難しいことを求めるのではなく、家庭の中でロールプレイをしてみる、保護者と一緒に行ってみる、言う内容をあらかじめ決めておくなど、負担を軽くする工夫が必要です。
「どこで、どんなやり取りなら比較的やりやすいか」を見ながら、本人に合った形で少しずつ広げていくことが大切です。
より実践的な内容は、こちらのページで詳しく整理しています。
保護者がしてはいけないこと
ここで挙げることは、場面緘黙のある子どもと関わる中で、多くの保護者が自然にやってしまいやすいことです。
- 代わりに答える
- 先回りして必要なことをすべてやってしまう
- 非言語の反応だけで十分とする
- できなくてもすぐ助けてしまう
こうしたことは、その場では本人の負担を軽くし、家庭としても早く場面を終えられるため、自然に起こりやすいものです。
珍しいことではありませんし、あなただけがしているわけでもありません。
ただ、少し我慢して、本人が反応する余地を残す方が、結果としてよい方向につながりやすいことがあります。
もちろん、何でも放っておけばよいわけではありません。
大切なのは、「できないことをそのままにする」のではなく、「できる形に整えながら待つ」ことです。
支援では、できないことを無理にさせるのではなく、できる形に整えながら、少しずつ前に進める視点が必要です。
声が出始めるときに見られる変化について
声が出始めるときに見られる変化について
長く声を出していなかった場合、声が出始めるときに、
- 小さな声
- かすれた声
- ささやき声
- とぎれとぎれの発話
といった状態になることがあります。
これは珍しいことではありませんが、この段階の反応を「これで十分」と受け止めすぎると、ささやき声や不自然な小さな声でのやり取りが固定化してしまうことがあります。
そのため、このような変化が見られたときには、前進として受け止めつつも、それを最終形にしない視点が必要です。
一方で、この部分は家庭だけで細かく判断するのが難しいこともあります。
無理に先へ進めようとするのではなく、必要に応じて支援者と相談しながら、慎重に見ていくことが大切です。
家庭だけで抱え込まないために
家庭でできることは多くありますが、すべてを家庭だけで進める必要はありません。
- 学校と情報を共有する
- 関わり方をすり合わせる
- 必要に応じて専門的な支援につなぐ
といった連携によって、支援はより現実的になります。
家庭での様子と学校での様子は異なることが多いため、
その違いを共有することが支援の出発点になります。
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