5歳児健診と場面緘黙

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5歳児健診と場面緘黙

「場面による発話の違い」に気づくために

まず資料を見る 「5歳児健診」と「場面緘黙」

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5歳頃は、ことばや対人関係、集団生活、生活習慣など、就学前の子どもの育ちを改めて確認する時期です。5歳児健診は、こうした発達の様子を確認し、必要に応じて相談や支援につなげていく機会として進められています。

こども家庭庁の「5歳児健康診査マニュアル」には、発達の評価により指摘されうる疾患の一つとして「場面緘黙症」が記載されています。

場面緘黙が5歳児健診の中に位置づけられていることは、私たちにとって大切な前進です。

場面緘黙が5歳児健診の中に位置づけられている。まず、このこと自体を大切にしたいと考えています。

一方で、場面緘黙の特徴を考えると、現在の問診だけでは気づきにくい場合もあります。

その理由の一つが、「場面によって話す様子が大きく違う」という特徴です。

「話せますか?」だけでは分かりにくい

場面緘黙は、「どこでも話せない」という状態ではありません。

家庭ではよく話しているのに、園ではほとんど話せない。友達とは少し話せても、先生とは難しい。普段は話せても、質問されたときや助けを求めたいときには声が出にくい。

大切なのは、単純な「話せる/話せない」ではなく、どこで・誰と・どのような状況なら話せるのかを見ることです。

現在の問診項目の例

「言葉で自分の要求や気持ちを表し、会話をすることがうまくできますか」

現在の問診項目の例

「集団生活では、友達と一緒に遊んだり、行動することができますか」

どちらも子どもの発達を確認するうえで大切な質問です。ただ、この聞き方だけでは、「家庭では話せるが、園などでは話しにくい」といった場面による違いが、そのまま表れるとは限りません。

家庭と健診だけでは、その「間」が見えにくい

例えば、家庭ではいつも通り話している子どもが、慣れない健診会場ではほとんど話さなかったとします。

家庭での様子だけを見れば「ことばには問題がなさそう」。健診会場だけを見れば「緊張しているのかな」と受け取られるかもしれません。

家庭よく話せる

家族とは自然に会話できる

→
園などここが重要

先生・友達・活動によって発話の様子が違う

→
健診会場話しにくい

「慣れない場所だから」と見えることも

でも、本当に知りたいのは、その二つの場面の「間」にある日常です。

園などではどうなのか。先生とは話せるのか。友達とはどうか。必要なときに助けを求めたり、自分の希望を伝えたりできるのか。

場面・相手・状況による違いを見ることで、はじめて見えてくる困りごとがあります。

5歳児健診の方法は、自治体によって違います

もう一つ考えておきたいのが、5歳児健診は全国どこでもまったく同じ方法で行われるわけではないということです。

実施主体は市町村であり、地域の体制に応じてさまざまな方法が取られています。

直接健診

対象児を健診会場で確認する方法

医療機関・園医などとの連携

地域の医療・園の体制を活用する方法

保護者問診を入口にする方法

問診の結果から追加確認につなぐ方法

園からの情報を組み合わせる方法

集団生活での様子も確認する方法

01園の情報が必ずあるとは限らない
02全員を同じ形で直接診察するとは限らない
03追加の聞き取りが必ず行われるとは限らない

だからこそ、ある一つの地域の方式だけを前提にするのではなく、どの地域でも残る「気づきの入口」を考える必要があります。

「園で話せますか?」だけでも十分ではありません

場面緘黙関連団体連合会の作業班では、問診にどのような視点を加えればよいかを検討しました。

検討初期には、例えば、

「園で先生や友達と日常的に話せていますか」

といった質問案も考えました。

ただ、検討を進めると、この表現だけではいくつかの課題が見えてきました。

「園で」

未就園の子どもには、そのまま当てはまりません。

「日常的に」

普段はいくらか話せても、質問に答える、助けを求める、必要なことを伝える場面で難しさがある子どもを拾いにくい可能性があります。

そこで、質問文そのものを先に決めるのではなく、まず「この1問で、何に気づきたいのか」を整理しました。

✓ふだんは発話できる
✓場面によって発話の状態が違う
✓必要なときに発話が難しい
✓就園・未就園を問わず確認できる

これは、問診の一文だけで場面緘黙を判断するためではありません。むしろ、次の確認につなげるための視点をどう残すか、という検討でした。

まずは「気づく入口」をつくる

大切なこと

健診だけで診断するためではありません

一つの質問への回答だけで、「この子は場面緘黙です」と決めることはできません。

まず、「場面によって発話の様子が違うかもしれない」と気づく。そのうえで、必要に応じて家庭や園などの情報を確認し、相談や支援につなげていく。

今回の検討で重視したのは、その最初の入口を増やすことでした。

作業班では、全国共通の問診などでまず気づく入口を残し、その後の詳しい聞き取りや支援の方法は、それぞれの地域の体制に応じて考えるという整理も行いました。

場面緘黙関連団体連合会から要望を提出しました

こうした課題を検討するため、場面緘黙関連団体連合会では加盟団体による作業班を設けました。

【静岡 場面かんもくの会】も作業班に参加し、現在の問診、自治体ごとの実施方法、未就園児への対応、場面による発話の違いをどう捉えるかなどについて、資料を作成しながら検討を重ねました。

その後、連合会として要望書が取りまとめられ、2026年9月17日にこども家庭庁 成育局母子保健課へ提出されました。

今回の要望は、すでに5歳児健診の中に位置づけられている場面緘黙を、実際の「気づき」につなげるための次の一歩です。

もちろん、問診項目を一つ加えれば十分ということではありません。その後に、家庭や園などでの様子を確認すること、相談先や支援につながる道筋をつくることも必要です。

資料|PDF

要望作成の過程で使用した説明資料

「5歳児健診」と「場面緘黙」

現在の問診でどのような点が見えにくいのか、当時どのような案を検討していたのかを整理した資料です。

PDFで資料を見る

※最終的に提出した要望書そのものではなく、要望書を取りまとめる過程で使用した説明資料です。

「気づくべき状態」と書かれた、その次へ

5歳児健康診査マニュアルに場面緘黙症が記載されていることは、大切な前進です。

だからこそ次に考えたいのは、その位置づけを、実際の子どもの「気づき」につなげていくことです。

どこで話せるのか。誰となら話せるのか。どのような状況になると難しくなるのか。

すべての場面緘黙が5歳児健診で見つかるわけではありません。それでも、

「場面によって、話す様子が大きく違っていないだろうか」

という視点が一つ加わることで、気づく機会を増やせる可能性があります。

「おとなしい子」「人見知りの子」「話さない子」だけで終わらせず、もう一歩だけ、その子の様子を見てみる。

場面緘黙が5歳児健診の中に位置づけられたことを、実際の気づきにつなげていく。

今回の要望は、そのための一歩です。

参考資料・出典を開く
  • こども家庭庁「令和7年度改訂版 5歳児健康診査マニュアル」
  • こども家庭庁「令和8年度 母子保健衛生費国庫補助金Q&A」
  • 場面緘黙関連団体連合会 5歳児健診要望書作業班資料
  • 【静岡 場面かんもくの会】「5歳児健診への要望について」説明資料