場面緘黙は障害ですか?

とつぜん「場面緘黙」は「障害」です!なんて言われると、その言葉のネガティブなイメージからショックを受けてしまう保護者の方もいらっしゃるかと思います。

しかし「場面緘黙」は2021年度現在、法令上の「発達障害」に分類されています。

そこで、そもそも「障害」とは何なのか? 「障害」に対する理解と、そのうえで「障害」を除去するために求めることのできる支援についてみていきましょう。

場面緘黙の法令上の位置づけ

世界保健機関(WHO)では、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死因や疾病のデータ記録、分析、比較を行うために、国際的に統一した基準で設けられた分類を定めています。

これを「疾病及び関連保険問題の国際統計分類」、略称「ICD」と呼びます。

International Statistical Classification of Discases and Related Health Problems(厚生労働省のリンクを開く)

日本も統計法に基づき、国内での医学的分類はICDに準拠した統計分類を使用しています。

場面緘黙のICDにおける分類

ICD-10(第10版)においては、「小児〈児童〉期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害」としてF90.0~F98.9までの中間分類されている中に場面緘黙が含まれます。

F90-F98 Behavioural and emotional disorders with onset usually occurring in childhood and adolescence

F94「小児〈児童〉期及び青年期に特異的に発症する社会的機能の障害」として、F94.0 「選択性緘黙」に分類されています。

F94 Disorders of social functioning with onset specific to childhood and adolescence

これは、話すことに関して顕著な、情緒的に決定された選択性によって特徴づけられている。

つまり子供はある状況下では、言語の能力を発揮するが、しかし他の(限定できる)状況下では話すことができない。

この障害は通常は対人不安、引っ込み思案、過敏性又は抵抗などが含まれるような顕著な人格的特徴を伴っている。

ICD-10 F94.0 Selective Mutism

「場面緘黙」を含む「情緒障害」は障害として分類されていても、これまで支援の対象とはなっていませんでした。
いわゆるASD(自閉症スペクトラム)、LD(学習障害)、ADHD(多動性障害)などと共に、既存の支援法の谷間にありました。

発達障害者支援法

2004年に公布された「発達障害者支援法」は、これまで福祉三法と呼ばれていた「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」「精神障害者保健福祉法」の対象ではない障害を持つ方々を広く救う支援法として新たに生まれてきました。

「発達障害者支援法」はなるべく広い対象(福祉三法の谷間にある方々)を救う新たな法律としてICDに分類されるF80「心理的発達の障害」F90「情緒障害」を対象としています。

発達障害者支援法(平成十六年十二月十日法律第百六十七号)

第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

F94に分類される「選択制緘黙(場面緘黙)」は「その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」に含まれるとして2021年現在「発達障害者支援法」の対象とされています。

発達障害者支援法の「支援」とは?

「発達障害者支援法」において、発達障害者の支援は「社会的障壁」の除去に資することを旨として行われなければならないとされています。

具体的には、国及び地方公共団体は発達障害の「早期発見と早期支援」のための必要な措置を講じるものとし、就学前、学校における発達支援、就労、地域生活における支援、医療、保健、福祉、教育、労働に関する各団体連携の下、必要な相談体制の整備を行う必要があるとされています。

「障害」とは個人ではなく「社会的障壁」によって生じるという基本的な理念に基づいています。

法令上は障壁を除去するためにあらゆる支援がなされるべき…となっています。

しかし「障害」だからすべて取り去って!といっても、簡単には出来ないことが多くあります。

症状の発現に個人差の大きい「場面緘黙」ですので、個々人の状況を踏まえ必要な相談、支援を求めてください。

自治体によって支援をうまく受けられないという相談の声を聞きます。
まずはご自身で理解の上、個々の状況に合わせて必要な支援を「合理的な配慮」に基づいて求めてください。

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