学校・園で場面緘黙のある子どもを支える方へ

学校や園で、返事をしない、発表しない、声を出さない。 そのような様子を見て、 「どのように関わればよいのだろう」と戸惑う先生や支援者の方は少なくありません。

場面緘黙の困りごとは、話すことだけではありません。 助けを求めること、自分の意思を伝えること、 授業や活動へ参加することなど、 学校生活のさまざまな場面に影響する場合があります。

このページでは、学校や園、支援の場で、 まず知っていただきたいことと、日常の関わり方の基本をまとめています。

二人の支援者が資料を確認しながら話し合うクレイ調のイラスト
話すことだけでなく、学校生活全体の困りごとを見る 本人が力を出しやすい環境と関わり方を考えます。

まず知っていただきたいこと

場面緘黙は、本人の意思で「話さない」のではなく、 不安や緊張によって、話したくても声が出にくくなる状態です。

また、不安が強い場面では、話すことだけでなく、 返事をする、助けを求める、自分の気持ちを伝える、 表情を動かす、身体を動かすといったことも難しくなる場合があります。

書くことや描くこと、給食を食べること、 音楽や体育へ参加することなどにも、 緊張や行動の抑制が表れることがあります。

静かに座っているように見えても、 本人の内側では強い緊張や不安が続いていることがあります。

「少し話せているから大丈夫」 「発表ができたから、もう問題はない」と判断せず、 どの場面で何ができ、何に困っているのかを具体的に確認することが大切です。

学校や支援の場で起こりやすいこと

困りごとの表れ方は一人ひとり異なります。 発話の有無だけでなく、学校生活への参加や、 必要な意思表示ができているかも確認します。

伝えること

コミュニケーションの困難

  • 返事やあいさつができない
  • 質問や発表が難しい
  • 分からないことを尋ねられない
  • 自分の希望や気持ちを伝えられない
  • 友達との会話に入りにくい
参加すること

授業や活動への参加

  • グループ活動で動きにくくなる
  • 音楽や体育で強く緊張する
  • 給食を食べにくくなる
  • 絵や作文を書き始められない
  • 人前に立つと身体が固まる
安全を守ること

健康や安全に関する意思表示

  • トイレへ行きたいと伝えられない
  • けがや体調不良を伝えられない
  • 困ったときに助けを求められない
  • 嫌なことを断れない
  • 緊急時に必要な意思表示ができない

安全に関わる伝達手段は、早めに決めておきます

トイレ、体調不良、けが、助けを求めたいときなどは、 発話だけに頼らない伝達方法を用意します。

カード、指差し、筆談、タブレット、決めた合図など、 本人が実際に使える方法を本人と確認しておくことが大切です。

まず整えたい環境

強い緊張によって表情や動きまで制限されているときは、 すぐに発話練習を始めるのではなく、 まず安心して学校生活を送れる環境を整えます。

1

安心して関われる担当者を決める

担任、養護教諭、支援員など、 本人が比較的安心しやすい大人を確認します。

2

急に人前で反応を求めない

発表や音読、自己紹介などは事前に伝え、 本人と対応方法を確認します。

3

答え方を選べるようにする

声、うなずき、指差し、選択肢、筆談など、 複数の伝え方を用意します。

4

負担の少ない場所を確保する

必要に応じて、保健室や空き教室など、 緊張を下げやすい場所を使えるようにします。

5

見通しを伝える

行事、発表、席替え、担当者の変更などは、 可能な範囲で事前に知らせます。

6

学校内で対応を共有する

担任だけで抱えず、養護教諭、管理職、支援担当者など、 必要な関係者で対応を共有します。

関わるときの基本姿勢

場面緘黙のある子どもへの関わりでは、 発話だけを急いで求めるのではなく、 本人が現在できていることを確認しながら進めます。

1

話すことを急がせない

返事を求め続けたり、その場で話せるまで待ち続けたりせず、 緊張の程度を見ながら関わります。

2

現在使える伝え方を認める

うなずき、指差し、筆談なども、 本人が意思を伝えるための大切な方法として扱います。

3

小さな変化を丁寧に見る

目線を向けた、反応が少し早くなった、 小さくうなずけたといった変化も確認します。

4

参加できる方法を残す

発話が難しくても活動から完全に外さず、 現在できる形で参加する方法を考えます。

5

本人の意思を確認する

本人に知らせないまま目標や練習方法を決めず、 可能な方法で本人の希望を確認します。

6

続けられる方法を選ぶ

一時的な特別対応ではなく、 学校生活の中で無理なく継続できる形を考えます。

支援の目的は、ただ話させることではありません。 学校生活の困りごとを減らし、 本人が持っている力を出しやすくすることです。

避けたい関わり方

本人を思って行っている対応でも、 不安を強めたり、本人が使える行動や参加の機会を狭めたりすることがあります。

一時的に要求を下げることや、 本人を助けること自体が悪いわけではありません。 本人の状態を確認せずに、同じ対応を長く固定しないことが大切です。

避けたい関わり

「話して」「声を出して」と繰り返し求める

代わりにできること

うなずき、指差し、選択肢、筆談など、 本人が答えやすい方法を用意します。

避けたい関わり

本人が反応する前に、周囲がすぐ代わりに答える

代わりにできること

少し待ち、本人が使える伝え方を示します。 難しい場合は、本人へ確認してから補助します。

避けたい関わり

負担を避けるために、いつも指名や活動から外す

代わりにできること

事前に本人と相談し、 選択式の返答や小人数での参加など、可能な形を考えます。

避けたい関わり

一度できたことを、次も当然にできると考える

代わりにできること

相手、場所、人数、活動が変われば、 緊張の強さも変わることを前提にします。

避けたい関わり

「そのうち話せる」と、様子を見るだけで終わる

代わりにできること

現在の困りごとと、できていることを整理し、 必要な環境調整や小さな目標を検討します。

避けたい関わり

緊張や行動の停止を「やる気の問題」と捉える

代わりにできること

表情、身体の固さ、反応までの時間など、 不安や緊張のサインとして状態を確認します。

家庭と学校で、子どもの様子を共有する

家庭では自然に話していても、 学校や園では強い緊張によって、 話すことや意思表示が難しくなる場合があります。

家庭と学校では見えている様子が異なるため、 どちらか一方の情報だけで判断せず、 それぞれが把握していることを具体的に共有します。

学校から家庭へ共有したいこと

  • 授業、休み時間、給食など場面別の様子
  • 発話以外にできている意思表示
  • 助けを求めることや健康面での困りごと
  • 友達との関係や一対一での様子
  • 安心しやすい先生、場所、活動
  • 見られた小さな変化や前進

家庭に確認したいこと

  • 家庭で使えているコミュニケーション
  • これまでの経過や環境の変化
  • 本人が困っていると感じていること
  • 本人が希望していること
  • 安心しやすい相手や活動
  • これまで有効だった対応や苦手だった対応

「学校では話しません」「家では話します」という共有だけでなく、 誰と、どこで、どのような方法なら反応や参加ができるのかまで確認すると、 本人に合った環境や目標を考えやすくなります。

具体的な支援を進めるとき

支援を始める前に、 本人が心身ともに取り組める状態にあるか、 本人がどのように感じているかを確認します。

学校生活そのものへの負担が大きい場合は、 まず安心して過ごせる環境づくりを優先します。

取り組みを進める場合は、 「話せる・話せない」だけで考えるのではなく、 次の条件に分けて整理します。

誰となら反応しやすいか。担任、養護教諭、友達一人、小グループなど。

場所

どこなら緊張が低いか。空き教室、保健室、放課後の教室など。

行動

何ならできるか。うなずき、指差し、筆談、小声、短い返事など。

すべての条件を一度に難しくせず、 現在できていることを出発点にして、 一つの条件を少しずつ変えていきます。

【静岡 場面かんもくの会】について

【静岡 場面かんもくの会】は、 主に場面緘黙のある子どもの保護者を中心とした親の会です。

学校や園への個別支援、児童生徒への直接支援、 個別の状況についての専門的な判断は行っていません。

このページは、学校や園、支援の場で、 場面緘黙への理解を広げるための一般的な情報として掲載しています。

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